闇金相談京都編 女性(24):観光で来た外国人に騙された京都の女性が闇金に手を出してしまった理由
私は京都の飲食店で働いています。
観光スポットの近くの飲食店で、観光で来たお客さんが立ち寄ることが多いお店です。
外国人の観光客もたくさん訪れます。
私の働いている飲食店の制服は和のテイストを取り入れたものなので、外国人観光客にとても喜ばれます。
一緒に記念写真を撮ってくれと言われることもしばしばです。
外国人男性、特に欧米の観光客は、日本人女性に対して優しいと感じます。
日本人の男性はあまり女性を褒めませんが、外国人男性は本当によく女性を褒めるのです。
外国人だから・・・と頭では分かっていても、褒められるとやはり悪い気はしません。
普段外国人と接することが少ない日本人の女の子なら、もしかして私に気があるの??
などと勘違いしてしまうかもしれません。
私は仕事柄こうして外国人男性の観光客と接する機会が多かったので、外国人観光客から褒められて舞い上がってしまうなどということはありませんでした。
でも、彼(マイク)だけは違ったのです。
まさか私が外国人観光客に騙され、闇金の泥沼にはまるなんて・・・!
彼は私のお店にお客としてやって来ました。
観光客は陽気なオーラを出していることが多いのですが、彼はどことなく影があるような印象でした。
「スミマセン、キヨミズデラ、ドウイキマスカ?」
彼は、片言の日本語で私に尋ねて来ました。
仕事柄道を聞かれることが多かったので、私は紙に地図を書きながら、丁寧に教えました。
「ドウモアリガトウ。ワタシ、ニホンハジメテ。ヨクワカラナイ。アナタ、アンナイシテホシイ。オネガイデス」
こういったことを言ってくる外国人観光客の男性は多く、普段はお断りしていました。
しかし彼はどことなく寂しげで、思わずOKをしてしまいました。
「アナタ、オヤスミアル?ワタシ、ニホンアト3ニチイル」
「明日ならお休みで一日家にいる予定です」
「アシタノアサ9ジニ、ココデマッテル」
「分かりました。9時にここに来ますね」
「アリガトウ」
こうして、次の日にお店の前で待ち合わせをすることになったのです。
そして次の日。
彼はお店の前にいました。
私を見つけると、ふっと笑顔になり、
「オハヨウ!ホントウニキテクレタ、アリガトウ。キヨミズデライッテナイ、アンナイオネガイシマス」
と言いました。
私たちはまず清水寺に向かうことにしました。
清水の舞台からは、京都市内を見渡すことができます。
「Oh!」
彼は息をのんで、その風景をしばらく黙って眺めていました。
私たちは舞台を後にし、その後境内を散策しました。
「アレハナンデスカ?」
彼が指をさしたのは、地主神社でした。地主神社は清水寺の一角にあり、恋愛のパワースポットなどとも呼ばれる、縁結びにご利益がある神社です。
「あれは地主神社です。お参りをすると恋愛がうまくいくなどと言われているんですよ」
「オマイリシテイキマセンカ?ワタシタチ、デアッタノモ、ウンメイカモシレナイ」
彼は私の目を見て微笑みました。
そのほかにも外国人が好むであろう観光スポットをいくつか周り、私たちは別れることにしました。
「カエルマエニ、モウイチドダケアッテクレマスカ?アナタ、ヤサシイ、ウツクシイ。ワタシノクニ、アナタノヨウナジョセイイナイ」
彼は私の手を握り、悲しげな眼でそうつぶやきました。
「分かりました。仕事があるから夜になっちゃうけど大丈夫ですか?」
「ダイジョブ。マタオミセノマエ、イキマス」
次の日の夜、彼は私を迎えに来ました。
寺社などはもう入れない時間帯なので、二人で食事に行くことにしました。
お互いの国の事や趣味の事などを話して、二人の仲は急接近しました。
帰り際、急に彼が暗い顔をしてうつむきました。
「キノウ、オカネオトシタ。コレデハクニニカエレマセン。オカネ、カシテクレマセンカ?」
旅先でお金がないなんて、きっとどんなに心細いだろう。私はコンビニでお金をおろし、15万円を彼に渡しました。
「アリガトウ、アリガトウ・・・。ツギニホンキタラゼッタイカエス。マッテテ」
彼は涙を流し、何度も頭を下げました。
「気にしないで。別に返さなくてもいいから」
「コノマエオトウサン、ナクナリマシタ。カナシクテニホンニヒトリタビ、シマシタ。アナタヤサシイ、アナタ、イイヒト・・・」
お金を返したいから連絡先を教えてくれと言われたので、私たちは連絡先を交換しました。
彼と別れて数日が過ぎました。
私の心の中は、日本人男性とは違ったピュアさを持つ彼に独占され始めていました。
また、彼に会いたいな。
そう思っている自分に気づくのでした。
ほどなくして彼から連絡がありました。
「オトウサンイナクナッテ、オカアサン、タイヘン。ニホンノカデンオクッテアゲタイ。ライゲツニホンイク。ソノトキオカネハラウカラ、オーブンレンジ、オクッテクレマセンカ?」
来月、彼は日本に来るんだ。また会えるんだ!
私は指定された家電品を買い、彼に送りました。
その後もたびたび連絡があり、お願いをされるたびに私は彼にお金や品物を送りました。
手元にお金がない時にはキャッシングまでして送ってしまいます。
そこまでしてでも、彼の力になりたいと思ったのです。
もはや私は、彼に恋をしていました。
この気持ちはどうすることもできませんでした。
彼が日本に来る予定だった日の前日、彼から連絡がありました。
今回はトラブルで日本に来られなくなってしまったというのです。
「ゴメンナサイ。トラブルアッテ、オカネ、タリナクナリマシタ。オカネアレバ、アイニイケタノニサビシイデス」
彼に会いたい。
その一心から、私は彼にお金を送ってしまいました。
往復の飛行機代などを考え、日本円にして30万円ほど。
これで、彼は日本に来られるはずです。
「アリガトウ、コレデ、アナタニマタアエマスネ。ウレシイデス」
日本に来たら私が働いているお店の前で落ち合う約束をし、電話を切りました。
しかし。
約束の日に、彼は現れませんでした。
何か問題があったのかな?とにかく彼の無事を知りたくて、私は連絡を取りました。
しかし、何度電話をかけてもつながらなかったのです。
そんな・・・。
その日は一旦帰り、次の日に連絡をしましたがやはり結果は同じでした。
まさか私、彼に騙されていたの?
信じたくありませんでした。
お父さんが亡くなったっていうのも、お金を落として国に帰れないっていうのも、今回お金が無くて来られないっていうのも、全て嘘だったの?
信じたくありませんでした。
そしてさらに私には、彼に騙されていたことと同じくらい大きな問題がもう一つ残ってしまいました。
借金です。
彼の要求に従ってお金や家電などを送るために、クレジットカードや消費者金融などからキャッシングを繰り返してしまったのです。
借金は、毎月の給料では到底返済できない額にまで膨れ上がっていました。
そのほかに日々の生活費だってあります。
明日、食べることもできないような状況でした。
外国人男に騙されて借金をした。
そんなこと、家族や同僚には口が裂けても言えません。
どうしよう。
お腹空いたな・・・。
みんなに内緒で、何とかしてお金を借りられないか考えました。
インターネットで検索をし、お金を貸してくれそうな業者を探しました。
そのうちの1社に連絡をすると、多重債務者でも大丈夫だということ。
親の連絡先と会社の連絡先さえ教えれば、審査はOKだとのことでした。
早速口座番号を教え、お金を振り込んでもらうことができました。
助かった・・・。
その時はそう思いました。
しかし急に胸騒ぎがしたので、その業者の事を調べてみました。
すると、ホームページに書かれていた貸金業登録番号は真っ赤な嘘で、全く違う業者のものでした。
もしかして、これって違法業者?
私は、いわゆる闇金からお金を借りてしまったのです。
金利は驚くほど高く、ただでさえ借金まみれの私に返済ができるはずがありません。
ほどなくして始まった取り立ては、すぐに親元にまで及びました。
全ての事情を両親に打ち明け、両親に闇金からの借金を全て立て替えてもらいました。
しかし、闇金は何かと難癖をつけてその後もお金を要求してきています。
完済したはずなのに・・・と納得ができませんでしたが、闇金相手にそんなこと言えるはずもありません。
結局、泣き寝入りしてさらなる取り立てに耐えるしかありませんでした。
ネットでいろいろと調べると、闇金から一度借りてしまうと完全に手を切るのは難しいと書かれていました。
それもそのはずです。
私の口座番号も、仕事先も、連絡先も全て知られてしまったのですから。
安易に警察に通報するのも危険だそうなので、どうすることもできませんでした。
知られてしまったものを、今から無かったことにするなんてできません。
本当に馬鹿だったと思います。
外国人観光客の男に騙され、おまけに闇金にまで騙されてしまった。
今はとにかく、闇金地獄から逃れたい。
それしか、考えることができない状況です。