闇金相談岡山編 男性(55):自分の会社が倒産…莫大な借金を抱えた元経営者が闇金からお金を借りた話
私は生まれ育った岡山で、会社経営者として生きて来ました。
もともと私は銀行員でしたが、20代後半ごろから密かに脱サラ計画を立てていました。
会社を立ち上げるのは子どものころからの夢でしたし、地元の雄であるあの野球界の名将のように輝きたいと常日頃思っていました。
俺も男だ。一念発起し、会社を立ち上げたのは結局40代に入ったころだったでしょうか。
初めは妻に大反対されました。
会社なんて立ち上げて本当に大丈夫なの?
まだ住宅ローンだって残っているし、もし倒産したら路頭に迷うことになるのよ?子どもたちの教育費だってあるし・・・。
何も、安定した今の仕事を辞める必要は無いんじゃないの?
そう不安がる妻に、一生辛い思いはさせないと約束し、しぶしぶOKをしてもらいました。
会社を立ち上げるには準備しなければならないことや提出する書類などが多く本当に大変でしたが、これで私の子どものころからの夢が現実になると思うと、疲れなんて全く感じませんでした。
睡眠時間を削る日々が続きましたが、楽しくて仕方がなかったのを覚えています。
いざ会社を立ち上げてからは、子どものころからの夢を叶えた嬉しさもあり、私は毎日夢中になって働きました。
妻とも約束しました。妻や子供たちを、一生この仕事で養っていくんだ。
うちで働いてくれている同志のような従業員たちにも、少しでも良い給料を支払いたい。
そのためには、とにかく日々精進するしかありません。
初めは小さかった会社も、数十人の従業員を抱えるまでになりました。
会社経営は順調で、何も恐れることなく日々を過ごしていきました。
しかし、状況は急変しました。
会社を立ち上げて10年以上たった頃。
大口の取引先であった会社から、売掛金が回収できないという事態が起こったのです。
小さな貸し倒れはありましたが、ここまで大規模な貸し倒れは今までになかったことなので、私は大変焦りました。
この取引先は経営が傾いているなどというそぶりも無かったため、まさかといった感じです。
この取引先への売り上げは当社の売り上げのかなりのウエイトを占めており、大打撃を受けました。
売掛金を回収して仕入れ先への材料費等を支払わなければならないのですが、当然、それができなくなってしまったのです。
連鎖倒産・・・。
そんな言葉が、私の頭をよぎります。
まさかそんな。私の大事な会社を、潰してなるものか。
絶対にこの手で経営を立て直してみせる!
仕入れ先へは、お願いして何とか材料の仕入れ代の買掛金の支払いを待ってもらいます。
そして本当に情けない話なのですが、数十人いる従業員にも、事情を話して給料の支払いを少しだけ待ってもらうことにしました。
しかしなかなか、業績は上向きません。
大口の取引先が倒産してしまったため、他に取引をしてくれる会社を必死になって探しました。
しかし、急に取引先を増やすことは、困難を極めました。
でも、倒産だけは何とか避けたい!
私は、銀行に融資をお願いすることにしました。
はじめのうちは融資してもらったお金で何とか穴埋めができていましたが、なおも経営は上向かず、焼け石に水といった状態です。
銀行からの融資も、もう受けられそうにありませんでした。
そして気付けば、莫大な借金を抱えることになってしまったのです。
会社はまさに、首の皮一枚でつながっているような状況です。
これからどうしたらいい?借金まみれの上に従業員に給料の支払いを待ってもらっているようなこの会社を、続けていくべきだろうか?
そう考えましたが、やはり思い入れいっぱいのこの会社を、たやすく潰す気にはなれませんでした。
そんなある日の事、事務所に一本の電話がかかってきました。
私が電話を取ると、「今日はご融資の件でご連絡をさせて頂きました。金利はかなりお安くなっておりますが、いかがいたしましょうか?」
こんなありがたい話があるでしょうか。
もちろん私はその場で融資をお願いしました。
早速審査を申し込むと、「お客様の会社は経営が思わしくありませんねぇ。
こちらもリスクを避けなければならないので、最初にご説明した金利ではご融資できません。いかがいたします?」
そのような返答でした。
しかし会社を倒産させたくなかった私は、この業者に望みを託したいと思いました。
「金利は少しくらい高くてもかまいません。
なんとか、融資をお願いできませんでしょうか?経営は、絶対に立て直して見せますから」
「そうですか、分かりました。ではご融資させていただきましょう」
私は言われた通りの額面の手形を振り出し、業者へと送りました。
このお金で仕入れ先などへいくらかの借金を返済出来たものの、そう簡単に経営は上向きません。
結局、私の大切な会社は倒産を余儀なくされてしまいました。
しかし倒産の感傷に浸っている暇など、私にはありませんでした。
業者からの借金は、はじめのうちこそなんとか金利分だけを返済できていました。
ところがそれができなくなった途端に、業者が恐ろしい取り立てを行うようになったのです。
融資をしてくれていた業者は商工ローンの業者の金利はあまりにも高く、いわゆる闇金だったようです。
「払えないっていうんなら、今からそっち行くぞ?お前をしばりつけてでも無理矢理手形を振り出させてやるからな」
「もし払えないならかみさんと子どもをさらうぞ。たっぷり働かせて体で返してもらうから楽しみにしとけ」
こんな脅しは序の口でした。
毎日何度も何度も電話がかかってきます。本音を言えば電話に出たくありませんでしたが、出ないとさらに業者を怒らせて本当に自分たち家族をさらいに来るのではないかという恐ろしさを感じ、全ての電話に応じていました。
とにかく、毎日毎日、何度も何度も闇金業者に、返済ができないことを謝りました。
怒鳴られ、馬鹿にされ、足蹴にされ・・・もう私の精神は、自分で自分の存在を肯定することができないくらいにボロボロでした。
そうこうしていると、また別の業者から電話やファックスで融資話を持ち掛けられました。
また闇金だろう、いかがわしい業者なのだろうと分かっていながら、初めに融資を受けた恐ろしい闇金から逃れたくて、結局別の業者に融資をお願いしてしまいました。
そして今度はその闇金への返済に追われ、また勧誘してきた別の業者に融資をしてもらう・・・という悪循環に陥るようになりました。
しまいにはほかの闇金からお金を借りても返済しきれなくなり、数社の闇金から多額の借金を抱えるという事態に陥ってしまいました。
思えば、従業員への給料の未払いもあります。
お世話になっていた仕入れ先への買掛金の返済も、滞ったままです。
私の会社が取引先の倒産によってあっという間に傾いたように、仕入れ先の経営も傾いてしまわないだろうか?そんな罪悪感を抱えながら日々を過ごしました。
数社に膨れ上がった闇金からの借金。
当然、一社の時よりも取り立ては激しさを増していました。
「このまま金返さないんだったら、お前の家や財産も俺たちのものになる。お前らは一家でのたれ死ぬことになるぞ」
「仕事が無くなったんなら、いい仕事紹介してやるよ。たっぷりこき使ってやるから覚悟しとけや」
もう、いつ闇金が私をさらいに来て強制労働をさせられてもおかしくない状況でした。
今になって思います。
会社が傾いた当時は自分の会社が本当にいとおしく、潰すなんて考えられませんでしたが、あの時もっと早く決断をしていたら・・・。
会社の存続にこだわりすぎていなかったら、ここまでの痛手を負わずに済んだのかもしれません。
家族や従業員をはじめたくさんの人たちを傷つけ、不利益を与えてしまった。
そして自分自身も、抜け出せない闇金地獄に陥ってしまった・・・。
たらればを今さら言っても仕方ないことくらいは分かっています。
でも、本当に後悔しています。
借りる前に闇金であることに気づいていれば、こんなことにはならなかったのです。
家族や従業員、周りのみんな、そして私自身が、倒産前の平穏な生活を取り戻せる日は来るのだろうか。
またみんなで平穏に暮らしたい。
そう願わずにはいられないのです。